本、漫画、その他

今昔物語集(作者不詳・大岡玲訳/光文社古典新訳文庫)

大河ドラマ「光る君へ」の影響で、平安期の古典がちょっとマイブーム。というわけで、手に取ったのは平安時代末期に成立したとされる説話集「今昔物語集」。本書は抄訳ですが、新訳だけあって訳文は読みやすいし、注釈も時として親切すぎるほどたくさんつい…

散楽団はなぜ殺されたのか~「光る君へ」第9話「遠くの国」~

10話を見る前に、先週の最大の疑問について、自分なりに考えた結論をまとめておきます。いろいろ考えてるうちに直前になっちゃった。 1 2~3話の時点で既に、直秀らは放免の、道長は検非違使の上役の恨みや反感を買っている 2 指示(依頼)の意図が理解…

漢詩の会!~「光る君へ 第6回 二人の才女」ネタバレ感想~

ますます面白かった「「光る君へ」第6回。見どころ満載な中でもとりわけインパクトが強かったのが道隆主催の「漢詩の会」でありました。 というわけで、今更ながら個人的な注目ポイントと感想です。 1 発端 ご注進 意外とやるな道隆 共同経営者貴子さま 漢…

『昭和の日本画と洋画 松岡翁 晩年の眼力』(松岡美術館)に行ってきた

2月11日の閉幕も間近、駆け込みで行ってきました。松岡美術館創設者である松岡清次郎氏が70代後半に入った昭和40年代後半以降、公募展等で発表された作品(つまり、その時点で世に出たばかりの作品)を収集し始めた、その成果ということで、昭和後半~終盤…

ローラ・フェイとの最後の会話(トマス・H・クック/ハヤカワポケットミステリ)

図書館で背表紙を物色していて、奇妙なタイトルに惹かれて手に取った1冊。大当たり。 主人公ルークはハーヴァードは出たものの、今はしがない三流大学の教授。20年前家族を襲った惨劇で麻痺した心を抱え、若き日の野望とはかけ離れた鬱屈した日々を送る彼の…

『鈍色幻視行』(恩田陸/集英社)

うぉー面白れー!ずっと積読だったのに、手をつけたら一気に読んじゃった。 映像化企画が持ち上がるたび関係者が死亡し何度もお蔵入りになっている「夜果つるところ」。主人公は世間から隔絶された遊郭と思しき館で、いわくありげな女たちを母「たち」として…

懐かしき、名前をたどれば

(ネタバレ注意)『ナイフをひねれば』(アンソニー・ホロヴィッツ/創元推理文庫)のレビューではありませんが、本書の内容に触れています。未読の方は本記事を読まない方がいいです。ご注意ください。 他にもいろいろ順番待ちの本があったのと、なによりホ…

「杉本博司 本歌取り 東下り」(松涛美術館)

今日は以前から気になっていた「杉本博司 本歌取り 東下り」を観に、渋谷区松涛美術館へ。今年の6月にエドワード・ゴーリー展で来たのが初めてだったから、今日で2度目の訪問ということになります。 この作品と「本歌取り」というのに惹かれてやってきまし…

『歌わないキビタキ』(梨木香歩/毎日新聞出版)

2020年6月から2023年3月まで連載されたエッセイを単行本にとりまとめたもので「山庭の自然誌」という副題がついているのでひっそりとした山の生活のよろこびを描いたものと思ってしまいそうになるが、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻等の社会・世界情勢、…

呪術廻戦第236話「南へ」①~これは果たして妄想か、現実か~ ※ネタバレ注意

ついに決着した最強対決。過去設定の応用問題が散りばめられたバトルについての感想とか、五条と宿儺の最強シンパシーってどうなのよとか、いろいろあるけどひとまずおいといて。 冒頭で五条は「俺の妄想であってくれよ」と言い、夏油は どっちだっていいじ…

辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿(莫理斯/文藝春秋)

ホームズがベーカー街で活躍していたのと同時代、イギリスの統治下にある香港を舞台に、清の満州八旗の名門出身の名探偵・福邇(フーアル)と、漢人の間借り人で探偵活動の助手をつとめる医師・華笙(ホアション)のコンビの活躍を描く、名探偵ホームズのパ…

「東京・ミュージアムぐるっとパス」使ってみた

6月から使い始めた「東京・ミュージアムぐるっとパス」(2500円)。美術館、博物館など101の施設(ほとんどは東京ですが千葉埼玉神奈川も幾つかある)の入場券又は割引券として使える(ただし各施設1回限り)という面白い企画券です。 初回使用時から2カ…

「蛍狩り」三点

せっかく入った「友の会」を活用すべく、トーハク(東京国立博物館)をぶらぶらしてたら、浮世絵のコーナーで蛍狩りの絵が並んでいた。 鈴木春信 夜の暗さが目立ち、人物もふたりだけなのが淋しくもロマンチックな雰囲気を醸し出してる。 鳥文斎栄之 こちら…

遅ればせながら、「春ゆきてレトロチカ」(スマホ版)

昨年出たスクエニの実写推理アドベンチャーゲームのスマホ版です。面白かった~!! 以前見かけて気になっていたけど、「実写ゲームはちょっと…」とスルーしたまま忘れていたのですが、「本所七不思議」(これも凄く面白かった!)とのコラボで思い出し、「…

悪魔はすぐそこに(D.M.ディヴァイン/創元推理文庫)

1960年代イギリスの本格ミステリ。裏表紙の紹介文によると、作者ディヴァインは「クリスティが絶賛した技巧派」とのことだが、確かに人間関係や、伏線を張るテクニックなどはクリスティを髣髴とさせるところがある(ネタバレになりかねないので迂闊なことは…

11文字の檻(青崎有吾/創元推理文庫)

ほとんど読んだことがなかった青崎有吾ですが、表紙裏の概要でJR福知山線脱線事故を題材にした作品、全面ガラス張りの屋敷でおきた不可能殺人、最強の姉妹を追うロードノベル…というわけわからない感じのラインナップに惹かれて購入。 いやー買ってみてよ…

「鎌倉殿の13人」大河ドラマ館訪問&鎌倉散策

ギックリ腰で急遽延期となった大河ドラマ館訪問。9日閉館の直前になってしまいましたが、ようやく行ってきました。 やっぱり一番おおーって思ったのはドラマで出てきた衣装や小道具の展示ですね。本物が展示されてる美術館や博物館とは違って、ほとんどすべ…

『サハラに眠る先史岩壁画』(目黒区美術館)(10/10まで)

土曜日。江戸川区球場の試合が思ったより早く終わったので、Twitterでみかけて気になっていた写真展を観に、目黒区美術館に寄って来ました。寄って、というほど近いわけでもないし迷ったけど、もうこの3連休で終わっちゃうし、この秋は思い立ったら行く!と…

『シアトル→パリ 田中保とその時代』に行って来た

宣伝でチラッと見かけた裸婦像がなぜか頭に残っていて、閉幕直前(明日10/2まで!)の『シアトル→パリ 田中保とその時代』(埼玉県立近代美術館)に行って来ました。 県立近代美術館のある北浦和公園は北浦和駅西口からすぐ。私がよく行く大宮公園や別所沼公…

青年ラファウ登場の意味~『チ。―地球の運動について―』

前々から気になっていたけど手を出せてなかった『チ。』を一気読み。凄く面白かったし、印象的なセリフや場面も挙げたらキリがないくらいですが、それとは別に、最後に残った謎がひとつ。 それはもちろん、アルベルトのエピソードで登場した青年ラファウであ…

鈴の音の謎など~『鎌倉殿の13人』第25話「天が望んだ男」より

6月26日放映の第25話でついに、頼朝が落馬するという有名な場面を迎えました。史実では落馬から死去まで半月ほどあったということですが、その間に意識を取り戻したという話は聞かないので、実質これで退場ということになるのでしょう。 戦闘はもちろん重要…

驚き満載、特別展「ポンペイ」

まん防も解除、真冬の寒さも去って、春へと本格始動。もうすぐ終わっちゃう展がいくつもあるし、ワクチン接種やら病院通いやらもあるし、4月からは都大会も始まっちゃうし…スケジューリングが難しいのもちょっと嬉しい、年度の代わり目。まずは一番気になっ…

黒山(金薫/(株)クオン)

19世紀初頭、李氏朝鮮後期の天主教(キリスト教)迫害を描いた歴史小説。何かアジアの文学を読みたいな、と図書館の書棚を眺めていて目について、途中まで読んだところでAmazonでポチってしまいました。 信仰を隠さねばならない息苦しい生活、横行する腐敗…

それは「奇跡」だったのか?~墨谷高校・甲子園への軌跡を振り返る~ ◆◆◆明日野新聞 高校野球総力特集 東京都代表・墨谷高校◆◆◆

197X年7月XX日。東京大会初の決勝再試合は、4-0で墨谷高校が快勝し、都立高校として史上初の夏の東京大会優勝、甲子園出場を決めた。まずはこの快挙を祝福し、併せて谷口主将以下墨谷野球部諸君の努力を讃えたい。選手諸君、そしてご家族・学校関係者やO…

Lord Edgington Investigates...(Benedict Brown)【2022.1.12追記】

※4巻まで読んだのでちょっと追記しました。末尾にちょっと4巻のネタバレあり。 kindle unlimited 始めたのであまり重くないものを…と思って物色しているうちに見つけたシリーズ。4巻まで読了。いやー面白いなこれ。今年の春には5巻が出る予定らしくたの…

重太の罪とは何だったのか~「生命の木」(諸星大二郎『妖怪ハンター』)より~

先週の話になりますが、三鷹でやってた時は見逃してしまった『デビュー50周年記念 諸星大二郎展 異界への扉』を追って、足利市美術館まで行ってきました。 最後の巡回先が自宅から2時間足らずで行ける足利だったのでギリギリセーフ。遠いとこだったらさすが…

「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜ーモネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」展

ちょうど東京で夕方から用事があったのでどっか寄ってくか~といろいろ物色していたら、やっぱ見たいなーと思う絵が幾つもあったので 行って来ました。 三菱一号館美術館に来るのは初めて。 建物は三菱が明治27年に建てた銀行兼事務所「三菱一号館」を再現し…

Project Hail Mary(Andy Weir)

映画『オデッセイ』の原作『火星の人』(といっても私は未見未読ですが)のアンディ・ウィアーによるハードSF。面白かった!科学音痴の私でも時間はかかりましたが楽しめました。太陽の発光量減退を解決するための切り札として宇宙船を送り出す…という設定か…

これが、かの有名な…!トリカブトと出会う

ちょっと遠出をした先で、何の気なしに入ってみた野草園。 秋も深まり少し寂しい植え込みの中、ひときわ目を惹く鮮やかな青紫。手元のリーフレットを見ずともわかる、これこそが かの有名な猛毒、トリカブトか…! 全身にアルカロイドの強い毒性を持ち、現実…

六人の嘘つきな大学生(浅倉秋成/角川書店)

SNSサービス「スピラ」を基盤にした急成長によって、一躍若者の憧れの的となった新興IT企業スピラリンクス。その初めての新卒募集には5千人超の応募者が押し寄せたが、最終選考まで残ったのは六人。 語り手役の波多野祥吾(立教大)、ヒロインの嶌衣織(…

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