日中戦争からアジア・太平洋戦争まで、日本が戦った戦争を具体の事例をあげつつ、日本軍兵士が直面した現実の過酷さという観点から描いている。餓死や海没死の多さ、特攻の戦果の乏しさ、自殺と「処置」。徴兵率の増大に伴う兵士の質の低下、心身の疲弊、物資不足からくる装備の劣化等々。
壮大な人的資源の空費は愚かとしかいいようがないんだけど、やってる人たちは合理的というか「仕方ない」「厳しい状況下でやれるだけのことはやってる」んだろうなと思うと、更に暗澹たる気分になる。
それと、単に戦況が悪化したから物資が欠乏して兵士の状況も悪化したという単純なことではなく、日中戦争頃からの戦線の拡大そのものが破綻の萌芽を孕んでていたことが示されていたのは(あまり意識してなかったので)有難かった。
兵士の現実を叙述するだけでなく、何がそういう事態を招いたのかという要因も最後のところで分析されていたけど、ここは俄かには納得しかねる部分もあった。劣勢にある戦争を早期に止めれなかった理由のひとつを、明治憲法下の政治システムに求めている点だ。だって、決断をくだす権限を持ってる人(だか神だか)はいたわけだし、文中の引用から見て、当人にその自覚もあったのだから。戦争ではないけど近年の諸問題への対応を見ても似たようなずるずるは起きてるわけで、つまり、日本の権力者、ひいては日本社会全体の意識・思考の傾向に依るところが大きいんじゃないかと思ってしまうのです。まあ、でもそれも私の感覚だしな。実際のところどうなのか。他の本も読んだりして、もう少し勉強してみたい。
それにしても。歯医者を配置できなくて虫歯がずーーーーっと放置されてたとかいう下りは、うぁあああってなった。これに限らず、負傷とかマラリア等の重病以外の衛生面の話は考えたことがなかっただけにしんどかった。