イラクサ姫と骨の犬(T.キングフィッシャー/ハヤカワ文庫)

強大な隣国の王子に嫁がされた姉を、その冷酷な手から救うべく立ち上がった主人公は小国の第三王女。ただし、30歳。

 

入江王国は良港を持ち戦略的には重要だが南北を大国に挟まれた弱小国。長姉ダミアは政略結婚でマーラが幼い頃に北方王国の王子ヴォ―リングに嫁いでいくが、程なくして事故死。次姉カニアがその後を継いで王子に嫁した後、マーラは修道院に送られる。そこで王女として以外の役割を果たし生きる術を学んでいったマーラは、何年もの時を経てようやく、長姉の死そして次姉に迫る危機の真実を知る。そしてカニアが死ねば次はマーラの番だ。姉の危機と自分の未来を救い、かつ北方王国との戦争を避けるためには、密かにヴォ―リングを斃すしかない。ヴォーリングを守護する教母(ゴッドマザー)の強力な祝福を突破して彼を殺すのに必要な武器を得るため、死者と語りまじないを操る墓守女の元に赴いたマーラは、三つの課題を与えられ…

 

一番目二番目の不首尾のあとの末っ子の活躍、死者を操る強大な魔女、三つの課題。教母の祝福と呪い、聖人の顕現、個性的な旅の仲間……おとぎ話のモチーフをふんだんに盛り込みつつも、すべてに一筋縄ではいかない捻りが効いていてニヤリとさせられる。様々な物事が最初に登場したときとは異なる貌を見せながらラストへと収束していく感じもファンタジーの醍醐味であり心地よい。

 

女性が、女性(+女性以外もだけど)の助力を得て、支配的男性の軛から女性(+女性以外もだけど)を解放するという物語*1だから、フェミニズム小説とかシスターフッド小説ということになるんだろうけど、それだけに女性キャラがみな印象的なのも特徴。

王族に似合わずスマートな立ち回りが苦手で内心では自信なさげな自他へのツッコミが入りまくりなアラサー主人公マーラ(ティーンエイジャーではなくこの年齢でこうだというところが、現実感と親近感とおかしみを与えてくれていると思う)、ずけずけとした物言に似合わず意外と面倒見のいい墓守女、気はいいけどいささか頼りないマーラたち三姉妹の教母アグネスというメインキャラ3人はもちろん、政略家の母やきつい性格の次姉カニア、そして北方王国の教母、神を守ってしまったあの人とか、怒りに満ちたあの人とか。

なかでもアグネスと、会話の中で言及されるのみのアグネス母*2はいろいろ想像の翼がはばたいてしまうなあ…

*1:

そういえば、そもそもの始まりである初代の王のくだりは、子孫の繁栄のために強大な力を持った女を呪縛し続け、子孫も逆に呪われる…というのは、進撃のフリッツ王とユミルとユミルの民を髣髴とさせる。まあ北方王国の教母を縛っていたのは愛ではなかったのでユミルほど面倒臭いことにはならなかったが。

*2:ナルニアの白い魔女みたいな存在だったのだろうか??

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