今回はタメの回というか、状況整理回というか、比較的平穏な気持ちで読めました。いや、冷静に考えればすごいことがおこってるんですけど。
1 飛行艇の中
冒頭のメインルーム全景。
前回を受けてお通夜状態の面々と、山積みになってこれでもかというほどの存在感を醸し出してる爆薬(この飛行艇爆破すんのに、こんなに大量の爆薬が必要だったんですかね?)
ライナーが所在なげに立ったままであることと、ジャンが頭の後ろで手を組んでいるのが目につきます。ライナーはもう、座ることすら許されないような心情なのかな…ジャンは最初、またシチュー会のときと同じ耳塞ぎかと最初思ったのですが、違うのね…ハッキリ頭を抱えるわけでもなく、その中間みたいな感じなのは、どういう心境をあらわしているのでしょうか。
前回でははっきりしませんでしたが、イェレナはやはり輸送艦組だったようですね。まあエレンの目的地がわかれば乗っけてく必要はないし、不穏な動きをしかねないし、ケガもしてるし連れていく理由もないわけですが、後述のように船組にも動きありそうだし、このままフェードアウトということもなさそう。
操縦士のオニャンコポンと新団長アルミンは操縦席。
ここでまず燃料が怪しいことが明らかにされる。基地目前で燃料切れをおこすことはもう必至ですね。オニャンコ生き延びてくれ~(泣)!!ハンジさんの名前と「頼んだよオニャンコポン」に泣かされそうになったと思ったらポンズですかそうですか…
2 ダメな会議にありがちなこと
まず、アルミンの絵の上手さ・的確さに驚く。そーいやーエルヴィンのロッドレイス巨人の絵も上手(しかもあれ、左手で描いてんのに)だったし、調査兵団団長の資質の一要素なのか?
地鳴らし開始したときハンジさん兵長はシガンシナの壁外にいたし、マガトとピークも壁崩壊と地鳴らし発動で作戦失敗が確定した時点ですぐにシガンシナから退避していたので地鳴らしの先頭にたつ始祖エレンの全貌を見ることができたのでしょう(他の面子は壁内にいたので全貌は見えなかっただろうし、壁はぜんぶ崩れるわマーレ兵との戦闘は続いてるわ兵団巨人たちが向かって来るわでエレンを観察するどころじゃなかった)。
ところで些細なことですが、リヴァイが「虫みてえにな」と評したところ。エレンが裏切者とわかったライナー巨人と対峙したときに「でけぇ害虫が」と罵ったのが鎧の造形からすると違和感あって、始祖エレンの姿が出てきてこのブーメランためだったのか…と思ったのですが、作中で明確に虫と言われるとやっぱそうだよね、と深くうなずいていまう。
始祖のどこに本体エレンがいるのかわからない(わかればエレンを生きたまま切り離して地鳴らしとめられる?)
→アルミンの超大型でまとめて吹き飛ばす(エレンは死ぬよね)
→ジークを殺せば止まるんじゃね(エレンは助かるよね)
→いやでもジークの居場所もわかんないんだけど(さすがピークちゃん)
→探すしかねえだろ(いやそれができるならエレンだって探せるんじゃ……?)
こうして並べてみるとまったく論理的ではない兵長の主張(「ハンジはそう予想した」とか「ジークは」「俺が」「仕留める」「力を貸してくれ」は理屈抜きでああああ…と思ってしまうのですが)。
でも、「エレンは説得に応じないかもしれないけどエレンを殺したくない!」という心情によるバイアスから、「ジークの方を殺せば」に皆が希望を抱き、「力を貸してくれ」で方針は決してしまう。
そしてその後は作戦云々ではなく、自己総括&決意表明大会に切り替わる。うーん…言ってることはひとつひとつ重くて、そうだと思うんだけど、なんかいびつというか、違和感を感じるんだよね…申し訳ないけど言わされてる感を感じてしまう。作者になのか、場の雰囲気になのかわからんけど。
更に話題はとび、エレンの意図の解釈へと移ります。
推論A:エレンは誰かに止めてもらいたがっている
事実B:アルミン達の力を封じられるはずなのに、地鳴らしを止めようとする彼らを自由にさせている
なるほどA故にBかそうかそうか…という雰囲気に……え?
3 説得マラソン
ぜんぶ聞いてやがったらしいエレンが、即座に一同を道に召喚します。なんかこの独りよがりで神経過敏な感じ、レストラン会談のときのエレンに似た雰囲気がある。あのときはアルミンの「結局何が言いたかったんだよ」に言い返せなかったけど今回は「じゃあ何で僕らをここに呼んだんだよ」に「話し合いは必要ないと話すため」と答えられたから、進歩したと言えるのか?
エレンを呼び戻そうとする104期たちの悲痛な叫び。まるで立てこもり凶悪犯の説得に当たる親兄弟のよう……ここにも違和感を覚えるのは、もちろんこれは彼らの心からの叫びなのだと思う一方で、一方的な「オレが悪かった」も違うんじゃないの?って感じてしまうんですよね…エレンの独善的な行動とその結果に対する怒りや悲しみはいやというほど描写されてきたけど、104期がエレンに直接ぶつける場面はほとんどなかった(その機会も少なかったけど)。それなのにこれは……やっぱり自発的に止まってもらうためには北風じゃダメだ太陽でという忖度や自分自身がしてきたことへの罪悪感が無意識なブレーキになって、完全な本音では話せていない感じがしてしまうのだ。でもジャンの「俺らが信用できねぇってのか!?」はスキ。
エレンの答え自体は、アルミン達の自由は奪わないことに一般的な意味での合理的な理由はない(奪いたくないから奪わないだけ)というのも含めて予想どおりかな。一番の驚きは、先回りして呼び出してクギを刺したことですね。オレを倒すなら全力でぶつかって来い…!とばかりに。公式戦の前にわざわざ主人公チームと練習試合を組んでボコボコにして奮起させてあげる王者チームみたいな…
まあでもこれって、実際に対面したとき説得を受けることを回避するための行動に思えます。「話し合う必要はないと話すため」と言ってるけど、実際に対面したとき、面と向かって話したくなくて、戦いだけで済ませたい、という心情の現れではないでしょうか。今だって、現実の、そして話す内容にも見合った19歳の姿で出て来れてないしね。
それにしても、戻ったときのライナー「俺の予想は当たったようだ…」って何なんだ。エレンの宣告聞いてたときは愕然としたビビり顔してたくせに…まさか、「エレンの意図をズレた解釈すると即リプで反論がつく」って予想か?いや、「終わりにしたいけど交渉は無理で自発的には止まらない」て予想だろうとは思うんだけど、後出し過ぎw
4 兵長の指
今回一番の謎ポイント。
説得むなしく、現実世界に帰された一行……はいいんですが、兵長の右指がある!作画ミスの可能性も排除はできませんが、今号の兵長は手が描かれるシーンが少なくて、
(1)冒頭の飛行艇で座っているシーン:包帯の右拳を左手で包んでる(右手指は隠れて見えない)
(2)アルミンのお絵描きシーン:腕組みしている(左手の指は見えるが右手は左腕の下に隠れて見えない)
(3)道でエレンを見つけるシーン:左手で指さしてる(2コマ使って)
(4)飛行艇に戻ったシーン:右手に5本指あり。包帯はない
のみ。これだけ少なくて、しかも(3)など無傷の左手を強調する描き方してるのを見ると、やはり単純なミスとは思えない…となるとやはり、道コネで再生したのか…?
そういう目で見直してみてもう一つ気になったのが、走っていったミカサたちが元の場所に戻ってきてしまったところ。
・4人が子供エレンめがけて走り出したときは、兵長含め残った3人は立っている。
・ずっと走って後においてきたはずの3人の姿が見えてきたときは兵長だけは座り込んでいる。
・そしてミカサたちが3人と再び合流したときには、エレンの隣に始祖ユミルがいる。
これは、
4人が走り出した後、ユミルがリヴァイの元に現れて座らせ、手を砂地につけさせて欠損した指を再生し、ちょうど4人が戻ってくるころ終了し、エレンの隣に移動した
と考えれば、①兵長が途中から座ってること、②ユミルがはじめからではなく、遅れてエレンの隣に出現したこと の説明がつきます(もちろん他にもいろんな解釈がありえますが)。
さらに、「オレを止めたいのなら…」と言われて皆がエレンたちの方を見ているとき、リヴァイだけ俯いて座り込んだまま(視線の先はおそらく手元)、エレンの方を見ようとしない不自然さにも説明がつく。
言葉よりなにより、再生した指こそが、リヴァイにとっては何より明確なメッセージになるのです。「戻った力をどのように使うも、使わないも、あなたの自由だ」というエレンからのメッセージに。
なーんて大マジに考えてたら、次号になったら三本指に戻ってたりして。
5 船上にて
キヨミ様とアニの会話からすると、ヒィズルも相当の被害を受けつつあるということのようです。しかし忖度のない本音なんだろうけど、「もしもやり直せるなら」も含めてアニの言い草、あまりに無礼で無神経だと思うよ。それがアニらしさでもあるし、協調性に欠ける15の子どものまま4年後の世界に放り出されたというアニの状況を如実に表してもいるのだけど(そのアニもファルガビに対して大人として責任を負うことで変わっていくのかもしれない。キレ方含めて2人に対する態度は健全な感じがする)。
キヨミ様はやっぱ好きだな~「損も得もなく、他者を尊ぶ気持ち」さすが、核心をついてます。そんなに自責の念にとらわれないで…守銭奴でお家第一の策略家という性格づけからしたら、パラディに対して誠実過ぎたとすら思うのに。
そして、すっかり息の合ったコンビになったファルガビから新提案が飛び出します。
ここで明らかになったのは、巨人たちに共通する能力が、脊髄液の摂取によるものだったということ。女型の汎用性はそれによる能力発現の度合いが大きいから、ということらしい。硬質化や水晶化、無垢の操りなどもそういうことでしょうか。まあもともとが始祖ユミル一体だったのが分かれていったわけだから、おかしくはない。
ファルコの仮説は、
・ジークの脊髄液を摂取した
・ジークの記憶を見た
・記憶の中に飛んでいる記憶があった
・今の顎は鳥に似ている
という事実から、「ファルコの顎は獣の特性も持っており、鳥の形態で発現できる=飛べる」という結論を導き出しています。うーん…
正規の継承者でさえ記憶の継承には強弱があるのに、微量の脊髄液摂取だけで記憶を受け継ぐことができるのか?だとしたら、いろいろ飲まされたアニの記憶はしっちゃかめっちゃかになっているはずでは?
でもジークの記憶を見た、とハッキリ言ってるから、ジークの記憶だと判断できる何かがあったんだよな…
ちょっとここはまだよくわからない。鵜呑みにできない感じがする。ファルガビ、そしてアニが飛び立っていくことは確実だと思いますが。でも船沈めるのはやめて~あと、イェレナの去就も気になる…ファルコに根性でしがみついていくのか?
6 機関車でGO !
今回最大の驚き展開。とうの昔に踏みつぶされていたと思ってたレベリオ住民たちがレオンハート氏主導のもと、機関車で大陸を横断してスラトア要塞まで近づいていたのです!レオンハート氏はマーレ人の運転士を銃で脅していますが、セリフからすると運転士家族も機関車に載せているようです。ということは、レベリオでの蜂起が成功して、いちはやく機関車と運転手(+人質家族)を確保、地鳴らし到達前に住民を乗り込ませて脱出?すごい行動力だ。
ファルコ両親ガビ両親、カリナにピーク父も同乗していますが、ポルコの両親やジーク祖父母はいない模様。ジークの裏切りはバレてるから、祖父母は既に処刑されていてもおかしくないんだな…
フィンガー氏に腕章を捨てろと言った青年もモブっぽくなくて気になりますね。こういう事態になっているのにクールで、ちょっと斜に構えた感じも受ける。上向き気味の鼻とかがガリアード兄弟に似てるかな?とも感じますが、どうなんだろう。
それにしても彼らは、コルトやポルコが死んだことも、ファルコが顎を継承したことも知らないんだと思うと辛い。
そして目前に迫る要塞から、飛行船が飛び立っていく。追いついてきた地ならしに向かい、攻撃を開始するのか?上からの爆撃なら有効そうだけど、無数に来るからな…爆弾切れ燃料切れとどっちが速いか…
そしてレベリオ住民たちがこの戦いに関与するのか、あるいは一方的に犠牲になるのか、傍観するのか。飛行艇組や船組の親族たちと再会することはあるのか。無言のカリナは今何を思っているのか…
とにかく誰も死ななくてよかった。生きてた人もいて、(とりあえずは)よかった。