葬儀を終えて(アガサ・クリスティ/ハヤカワ文庫)

なんとなく、クリスティ。

というわけで図書館から借りて来た一冊。

 

病気で長くないと言われていたとはいえ、思いがけず早くに亡くなった長兄リチャードの葬儀の直後、末妹コーラが口にした「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」という無邪気な言葉。多少なりとも金に困っていた親戚連中は、平等に分配される多額の遺産を喜び、希望に胸を膨らませつつも、コーラの発言に不吉なものを感じる。コーラは、20年以上前の少女時代から、言わずもがなの真実を口にしてしまうことが多々ある困った娘だったのだ。

果たして翌日、コーラが自宅で惨殺死体となって発見される。やはり、コーラの言葉は真実だったのか??リチャードの遺言執行人でもあり友人でもあった弁護士のエントウィッスルはポアロに相談を持ち掛けるが…

実は小学生時代以来の再読で、クラスで提出する読書感想ノートに犯人の名前を書いた(今考えるとヒドい話だ)こともあって40年以上経った今でも犯人は覚えていたのですが、金に困った胡散臭い連中があちこち右往左往したり疑心暗鬼に陥ったり、遺産を前にしてバラ色の計画を立てたりする辺りがラストはわかっていても面白い。

魅力的で聡明な未亡人のヘレン、病弱な夫に過保護ママのように仕えるモード、企画の才と意欲に恵まれながらつまらない(と思われる)男を熱愛するスーザン、大根女優だが鋭いところのあるロザムンドなど、一筋縄ではいかない女性親族たちも魅力的。

そして何より、あっと驚く真相が明らかにされた後でもう一度読み返すと、周到極まりない一節に唸らされる。既にここで、犯人の人間像がくっきりと浮かび上がっているではありませんか!凄すぎる。まさにダマサレタ!なんですが、同時にラスト近くで犯行を認める部分と響き合い、人間の哀しさを感じさせる部分でもあります。

1953年の作品ということで、作品の至る所に第二次世界大戦の傷跡が残っていて、それが事件解決の手がかり足がかりになっている…と言えなくもないところも興味深い。おススメです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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