『魔眼の匣の殺人』(今村昌弘/東京創元社)

恥ずかしながらやっぱり待ちに待っていた一冊。一気に読んでしまった。

恐怖の夏合宿から数か月後の11月の終わり。班目機関の手がかりを追って山奥の寒村を訪れた比留子と葉村だったが、なぜか村はもぬけの殻。曰くありげな男女の高校生2人連れ(カップルではない)、オカルト雑誌の記者、気難しい大学教授とその息子、ツーリング途中の青年、墓参りに来た村出身の女…何かに吸い寄せられるように村に立ち入った訪問者たちは、葉村たちと共に村の奥の真雁地区にある班目機関の旧施設、今は予言の力を持つという老女サキミの住居として使われている「魔眼の匣」までやってくる。しかし待っていたのは「11月最後の2日間に、魔雁で男女2人ずつ、4人死ぬ」という予言。今日は28日。あすからの2日間で4人が??

外部に連絡しようとする者、帰ろうとする者もいるが、電話は不通(もちろん♪)、更には村と「魔眼の匣」をつなぐ橋まで燃え落ち、外部との連絡が遮断されてしまう。老女の予言は百発百中だと言うし、更には女子高生の描く奇怪な予知絵も次々に現実のものとなる。予言を100%信じる者、頭から否定する者、さまざまだったが翌朝早くも1人目の死者が…予言は成就してしまうのか?次の犠牲者は誰か?次々におこる事件の犯人は?予言の期限まで、閉じ込められた彼らは生き延びられるのか?

 

やっぱいいなークローズドサークルって。

 

さすがに前作『屍人荘の殺人』のようなアレではなく、かなりフツーになってきてます。それでも楽しめる作品でした。メタ的なクローズドサークル批判とかも出てきたりしてw

ラノベ調だなと思いつつも、比留子&葉村のコンビは悪くないし(でも明智先輩がいないのはやっぱり寂しい…)、予知絵を描く女子高生・十色真理絵の比留子ミーハーぶりも可愛い。他にも気難し気に見えて意外なマニアぶりを発揮する師々田教授など、キャラ立ては結構魅力的。それが結構容赦なく殺られてしまったりするわけですが…

だけど事件そのもの、特に動機を含めた事件の骨組みはやっぱちょっと説得力に欠けるような気がするのは残念。前作ほどの極限状態ではないせいもあるんでしょうが…メイン事件の「発想の転換」は確かに凄いけど、だからってねえ…という思いが先行してしまう。

バックグラウンド部分は一番不満な点で、プライドの在り様(というか種類の違い)という点で心理的におかしいし、そもそも今になってなんて、行動をおこすのが遅すぎるよ…自分の身に置き換えてみたらいかに不自然かわかるはず。これに説得力を持たせるのは、「人間が描けている」必要があるんだろうな。それにしてもあいつは最低だな手紙一つで足りるだろーが!!

 

前作のような驚天動地の展開を求める方には物足りないかもしれませんが、比留子と葉村のキャラに多少なりとも思い入れのある方、クローズドサークル好きな方、胡散臭いものが好きな方には楽しめる作品だと思います。

第3作へのフリももちろん怠りなく、いつになるかわかりませんが、次回作が楽しみです。明智先輩の再登場orスピンオフでもあれば一番うれしいんですけどね。ミステリというより完全にキャラ小説として読んでるな…

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