立夏奈良紀行(3)~大和三山&藤原京を、筋肉痛と共に~

3日目の朝。銭湯の電気風呂だの発砲風呂だのでも癒えぬ大臀筋と大腿四頭筋の痛みを抱えながら、8時過ぎには出発。

実は大和三山には4年前の夏にも来たことがある。2015年、甲子園終了からU18の世界大会開幕の合間を縫ってのことだから、8月も終わり頃。そのときは、半袖Tシャツで虫よけスプレーも持ってないという愚かすぎるいで立ちだったので、道が整備された畝傍山は問題なかったものの、香具山では蚊の大群に襲われてほうほうの体で逃げ帰り、耳成山は断念、という挫折で終わった。しかし今日は違う。長袖だし、キシリア様のようなマスクはしてないものの、顔を覆うタオルぐらいはあるし、虫よけスプレーも持ってきた。今度こそは大和三山を制覇するのだ。といってもまあ、どれも標高200mもない小山なんですけどね。

 

スタートは橿原神宮前駅。駅から5分ほどの橿原神宮を抜けて、まずは畝傍山に向かう。橿原神宮の鳥居は遠くから見ると黄色く見える。近づいてみると、塗ってあるわけではなく、地色だった。境内に「深田池」という大きな池がある。というか、この農林水産省のHP「ため池博士のための池研究サイト イケQ」によれば、池は奈良時代からあり、橿原神宮の創建は明治23年ということなので、神宮の方がずっと新参。

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しかしこの池がとても素晴らしい。近くに住んでいたら、毎朝バードウォッチングに来たいくらいです。アオサギと…

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五位鷺さま。やはり貴族的な首の捻り。

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その幼鳥、ホシゴイもいた!

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カワウが鈴なりになってるコロニー。

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などと調子に乗ってバシャバシャやっていると、また昨日みたくバッテリーがなくなってしまう恐れがあるので、自重して先を急ぐ。

 

畝傍山のふもと、畝傍山口神社。ここから山頂(標高199.2m)へ向かう。道は狭くなっているところもあるけれど歩きやすく整備されていて、ゆっくり歩いても15分ほどで山頂に着く。ウォーキングする人は多く、サークルメンバーでもあるのか、元々地元の知り合いなのか、互いに声をかけあっている。ストレンジャーの私にも「おはようございます」と挨拶してくれますが。

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山頂に立つ神社跡。登り切った爽快感のなか、山頂から見える景色は素晴らしくはあるのですが、いかんせん木が茂り過ぎていてスッキリ一望のもと見渡せる、という感じにはならないのがちと残念。

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 山頂から写真を撮っていたら、休憩中のおじさんが山の名前を教えてくれた。このフタコブラクダのようなのが二上山(にじょうさん・ふたかみやま)。その左隣が葛城山、その隣が金剛山(写真からははみ出てると思うけど…)、なんですと。うーん名前のみ聞く山々があれなのか…としばし感慨に浸る。今、西を向いているので、北から南に向かって二上山、葛城山、金剛山ということになる。

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畝傍山を下り、本薬師寺跡へ。奈良市にある薬師寺の前身だそうで、それ故に「本」薬師寺とか「元」薬師寺」と呼ばれる。平城遷都に伴って移転した後も、一部の建物はこの地に平安中期までこの地に残っていたそうです(現地案内版より)。と言っても今は「跡」という名のとおり、小さなお堂の庭に礎石が残るだけ。お堂の前面に「司馬遼太郎が考えたこと」でこの場所について触れられた一文が掲げられていて、「礎石の向こうは葦牙(あしかび)のにおいたつような万葉ふうの野、といいたいが、そこまで注文どおりにはいかない。畝傍の裏のただの麦畑である」としめくくられている。昭和41年だから50年以上前の文章ということになる。今は地元の小学校が育てているホテイアオイで有名らしいが、季節がまだなのか、一面のレンゲ畑になっていた。

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葦原とは違うけど、これも紫野っぽくて(麦畑よりは)万葉ふうでいいじゃん…(←これがとんでもない勘違いであったらしいことは後日判明する)姿は見えないけど、ぎょぎょしぎょぎょしと鳴く声が聞こえる。オオヨシキリだろうか。

鳥の姿はツバメが2羽、3羽だけ。空を撫でるように、切るように、しなやかに、するどく、視界を過ぎっては消え、過ぎっては消え。 

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おっと…あまりに居心地が良すぎてぼーっとしてたら、もう11時半を回っている。急がないとまた耳成山断念になってしまう…と香具山を目指して腰を上げる。

 

標高152.4m、形も平べったい感じで微妙ですが、大和三山の中でも特に神聖視されている山です。ふもとには天岩戸神社。

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本殿がなく拝殿のみ。その後ろに大きな石があって、それがご神体です。

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拝殿の中は天岩戸神話の絵物語で飾られていた。古事記では香具山から「賢木(神事に用いる常緑樹一般)を取って来て…」とありますが、この神社では笹竹を使ったことになっていて、そのためか、「7本竹の不思議」という伝説もあるそうです。

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山頂へ向かう道は、最初はいいのですが、いくつかある名所への分岐が少しわかりづらくて、ちょっと行きつ戻りつしてしまった。人もほとんど通らず、少し寂しい。ただ、以前来たときよりは季節も早く、気温もまだそれほど高くないので、ハエや蚊が少ないのは有難い。

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この歌碑(「やまとには むらやまあれど…」)があるってことは、ここが国見台跡なんでしょうか……やはり視界はいまいち。この歌の頃は邪魔な樹々がなくて視界が良かったのか、もっといい別の場所で国見したのか、あるいは現実の視界に関係なく、心眼で見たのかはわかりませんが。

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頂上に出ると、畝傍山を見渡せるスポットがある。香具山は畝傍山のほぼ真東にあるので、畝傍山から西に見えた二上山や葛城山も見渡すことができる。

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さきほどの国見台跡の歌碑も記載されてます。

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香具山を下り、藤原宮跡へと向かう。途中寄り道迷い道があったので、今日じゅうに耳成山まで登るのは止めておいた方がよさそうだ。時間的にも、体力的にも。ていうかもう、坂道も階段も見たくない。

というわけで、ひたすら平坦な土地を歩く。標識や案内板、後は復元した柱跡のほか、何もありません。

 

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向こう(北側)に見えるのが耳成山。天子は南面するのでこちらを背にして座すことになる。すると…

 

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東の香具山は左手に、

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西の畝傍山は右手に来る。

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藤原宮跡を背にして南に向かうと、朱雀大路跡に辿り着く。道幅19m、左右の側溝がそれぞれ4m(右の写真が側溝を復元したもの)もあったのだそうです。

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かつてここから藤原宮の南門・朱雀門へと続く朱雀大路があった。 当時は視界を遮っていたであろう藤原宮の建物も今はなく、北の耳成山まで見通せる。

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都の中心を貫く大路を、どんな人々がどんな目的で、どんな気持ちで行き来したのだろうか。無理だとわかっていても、やはり、知りたくなる。

 


今日はここまで。耳成山は、また明日…

 

 

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