堆塵館(エドワード・ケアリー/東京創元社)

アイアマンガー三部作の第1部。

と言っても一区切りついた「第1部 完」というより、「どうなっちゃうの~!?」という『スターウォーズ帝国の逆襲』に近い読後感です。

 

 

ヴィクトリア女王時代のロンドン郊外にそびえたつゴミの山とゴミの山から巨万の富を築いたアイアマンガー一族の城「堆塵館」。そこに住むアイアマンガー一族(召使たちもすべてアイアマンガーの血を引く人間で固められているという)は、「誕生の品」というモノ(大抵ははっきり言ってただのがらくた)を誕生後すぐに与えられ、それと寄り添って生きている。

浴槽の栓を誕生の品とする少年クロッドは、現当主の孫だが既に両親は亡い。幼い頃から病弱で、「物の声(ただただ連呼される名前の数々)」が聞こえてしまうために、周囲の人々からは概ね厄介者扱いされていた。ある日、ロザマッド伯母さんの誕生の品(ドアの取っ手)がなくなるという大事件がおこり、館じゅうが捜索され、物の声が聞こえるクロッドも駆り出されるが見つけられない。伯母さんは衰弱していき、館は不穏な空気に包まれる。

一方、両親を「急に動かなくなる」奇病で亡くし、施設で暮らしていた少女ルーシー・ペナントは、ある日突然、アイアマンガーの血を引く者として、館の下働きとして働くこととなる。

堆塵館では、召使たちもすべてアイアマンガーの血を引いているが、執事や家事頭など数人の上位者を除いては個別の名を剥奪され、「アイアマンガー」としか呼ばれない。館の地下で起居し、上の階で暮らす主人たちとの接触も禁じられている。

誕生の品を与えられる(ルーシーのは封印されたマッチ箱)などの奇妙な儀式のあと、ルーシーは上の階の暖炉掃除を命じられるが、館でおきている異変(と自らの結婚)に悩むクロッドと偶然出会ってしまう。そして…

 

 

登場人物や事件(そして作者の手による挿絵)は奇妙で不気味で時にグロテスクですらあるのだけど、ボーイミーツガールな展開(ルーシーはもちろん、ルーシーと出会った後のクロッドの行動も何やかや言って結構痛快♪)といい、自由や個性を抑圧しようとする力を、愛と勇気で撥ね退けて新しい明日を築くというテーマ(たぶん…)といい、ヤングアダルト児童文学の王道でもある。

アイアマンガー一族の秘密、誕生の品とは何なのか、クロッドに聴こえる声の正体は?

謎の幾つかは真相が明らかになるけれど、クロッドとルーシーの運命はまだ定まっていない。

第2部以降にも期待。

 

 

ただ…食事中に読むのは止めておいた方が良い。

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