ま、万葉マラソン完走…

やっと最後までたどり着いた『万葉集』(中西進訳/講談社文庫)。放送授業『古事記と万葉集』で興味を持って読み始めたのが2016年の夏だから、2年半近くかかったことになる。途中、ちょっと型にはまった感じがしてあまり面白くなく、読み始めても1ページ(短歌五首分くらい…)で挫折、とかいう時期があったことを思えば、完走できてよかった…

巻十四の東歌や巻十五の遣新羅使あたりからは俄然面白くなり(それにつれてペースも上がった。それまでは年内に終わるとは思ってなかった…)ましたが、大伴家持の独壇場となる巻十七以降は歌日記のような連続性があって、「人生の物語」的な味わいがある。特に越中時代は、転勤で大都市圏から地方都市に赴任して何年か過ごした経験のある人なら、共感するところが多いのではないでしょうか。風光明媚な赴任地を愛する気持ちはもちろんあるけどやはりここは田舎で都が恋しいし何より残してきた妻が恋しい帰りたい、赴任地で親しくなった人が転勤で去ってしまう淋しさ、任務で暫く都に行ってた人には「さすが都になじんだ人は違うね」とからかう。かと思えば、都の人が来れば自慢げに名所に連れていって「こんなに素晴らしいところとは」と褒められて悦に入ったり。何かにつけてやたら飲み会が多いし。そうそう、都に妻がいるのに遊女と深い仲になってしまった部下をこんこんと諭す長歌もありました(プラス「奥さんが馬でここまで乗り付けてきたぞ」と脅す歌w)。まさに日々の哀歓、といった感じなのですが、都に戻ってからの家持の人生を考えるとまた胸に来るものがあります。

 

 

それにしても、『万葉』の名に違わずいろいろな貌があって、読み終えた今でも全貌のつかめない歌集です。二周目はもう少しよく理解できるでしょうか。講談社文庫版は文庫本4冊に漢文の詞書、万葉仮名の原文が全部入っているところが素晴らしい分、現代語訳と訳注はかなりあっさりし過ぎ(泣)だったので、もう少し解説の詳しいシリーズを探したり、関連書籍を読んだりして、またチャレンジしたいと思います。

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