春と生命

今日は大宮第三公園から芝川沿いをぶらぶらと。

 

■第三公園の沼のほとりで水鳥たちを探していると、「打ち上~げは~な~びー♪」と応援歌が聞こえてきた。ここから1.4キロ先の市営大宮球場から風に乗って来たらしい。ずいぶん遠くまで聞こえるもんだなー。 芝川沿いの某高校のグラウンドでも、練習の声。学生スポーツは新1年が加わり新たなスタートを切る時期。毎年見られる光景ですが、どの年もどのチームも、昨年と全く一緒、ということはない。同じ樹でも、咲く花は毎年違うのだ。そしてどんな花を咲かせるかは、自分たち次第。

 

■再び芝川に戻り、菜の花の土手に沿って歩いていると、ふと目についたオレンジと黒。テントウかな?と覗き込むと違った、カメムシ体型。色は黒地にオレンジ色の紋様。何といいましょうか、黒いコートの背中のエリにオレンジの縁取りがあって、真ん中には大きなY字を描いてその根本に横一本線描いた、みたいな。テントウムシとかに比べると艶というか照りの少ない、地味な感じです。 改めて注意しながら歩いてみると、あっちにもこっちにも同じ奴がいて、ちょっとびっくりしました。調べてみると菜の花やダイコンなどのアブラナ科につく虫だそうで、その名もナガメだとか(菜の花につくカメムシの意)。当然のことながら畑の菜の花にもつくので害虫とされていますが、この土手でなら、そう言われることもない…かな?「菜の花に埋もれる彼女」撮影中のカップルたちの前には出て来ない方がいいと思いますがね。

 

■新しい生命の息吹で溢れかえるこの季節になると、星野之宣のSF漫画「セス・アイボリーの21日」(「スターダストメモリーズ」所収)を思い出す。 惑星リンデンへの接近中に事故で大破した調査船。生存者は、辛くもシャトルで脱出し惑星に不時着した若き女性科学者(専門は遺伝子工学らしい)セス・アイボリーただ1人のみ。惑星には呼吸可能な空気もある。食料になりそうなものもある。たった一人とはいえ、救助が来るまでしばらくの間を凌げればいい。しかし…やがて思いもかけない事態に直面し、愕然とするセス。実際に救助船が送られて来るまでの21日間を描いた、哀しくも激しい人生の記録です。

生きることの意味は、過去から引き継いだバトンを未来へと繋ぐことだと言う人がいる。だとしたら、自分自身は?自分という個が今生きていることそのものの意味は?過去と未来の狭間の、ただそれだけの存在なのか? 歴史の中での個々の一生の儚さ軽さ、それでもそれぞれの生はそれぞれにとって唯一の、特別なもので、一人一人が感じる愛も孤独も、全体の中ではなんて薄められ慰められるはずもない。だけど時は止まることなく過ぎていって、いずれは誰もが死を迎え、血であれ記憶であれ、次代に引き継がれたものしか残らない。

こうまとめてしまうといかにも言い古された感が漂ってしまいますが、この作品が凄いのは、この葛藤の文字通り「縮図」になっていること。 「スターダストメモリーズ」は今は幻冬舎の漫画文庫になっているようですね。直球SFを満喫できる作品ばかりなので(でも私は「セス・アイボリーの21日」がダントツに好き)、機会があったらどうぞ手に取ってみてください。

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