魔人の地 【嵐の王1】(カイ・マイヤー/創元推理文庫)

ドイツ産ファンタジー自体あまり読んだことなかったのですが、これはさらに珍しいオリエント世界を舞台にした作品ということで手に取ってみましたが、砂漠とオアシス、魔法の絨毯、きらびやかな都、宮殿と謎の美女、悪い魔人とよい魔人…。うーん確かに千夜一夜テイスト♪ 50年前の「魔法の暴走」で生み出された凶悪な魔人が跋扈し、人間は辛うじて大都市に城壁を築いて対抗(ん?どっかで聞いたような?

しかし原作の発行は2008年)していた時代のサマルカンド。暴虐な太守の支配する都で、夜ごと禁じられた魔法の絨毯レースに明け暮れる密輸業者のターリク。ちなみに魔法の絨毯は家畜程度の意志や感覚があり、毛足に手を突っ込んで操縦者の命令を伝えて動かすのですが、他の絨毯に気を取られたり、水に濡れるのを嫌がったりと、扱いに気遣いも必要な奴らです。

6年前、魔人のはびこる砂漠で連れ去られた恋人マリヤムの面影から逃れられず鬱々と過ごす彼だったが、絨毯レースのさなかに太守の宮殿から脱出しようとしていた侍女サバテアと出会ったことから運命が一変する。バグダッドへ連れていってくれという頼みが聞き入れられないとみるや、サバテアは代わりにターリクとは犬猿の仲の弟ジュニスと共にバグダッドへ向かう。やむをえずターリクも二人を追い、3人は魔人の襲撃を逃れつつバグダッドに向かうこととなるが…

当然魔人に見つからないように進まねばならないし見つかれば応戦しなくちゃならないのはもちろんのこと、魔人の動きを見張るうちに彼らの奇妙な行動、恐るべき意図に気付いたり、結局捕まって離れ離れになったり…苦難と危機が続きますが、本作ではまだ話は佳境に入ったばかり、という感じ。ラストの引きも凄くて(ある程度予想はつくけど)、3部作と銘打たれてますが上中下巻の「上」という方が正しいと思う。

ターリクが過去を悔やんでぐじぐじぐじぐじ絨毯競争やったりサバテアと出会ったりジュニスといがみあったりする冒頭部分はともかく、3人が合流して本格的に旅が始まってからは急に面白くなって、引き込まれました。とにかく先が知りたくて夢中で読んだ。 ただ手放しで絶賛できないのは、キャラの魅力がイマイチなこととか、話がシリアスな割に軽い感じがするせいか。

これから話が進んで魔人の秘密とかが明らかになればまた違った印象もあるのかもしれないけど、魔人の首領アマリリス(なんでこんな名前なのか!?)の言ってることとか、どーも地に足が着いてないというか、迫って来ない感じがする…内容的には凄いこと言ってるのに。「うぬ」って二人称も個人的には大袈裟過ぎてどうかと思うし。 でも久々に面白いファンタジーだったので、次巻以降でこの評価を覆してくれることを期待して待ちます。

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