ゴールデンカムイ(野田サトル/集英社)

 

コミックス5巻が出ていたので「おおっ!」とばかりにGET☆ヤングジャンプに連載中の、明治時代の北海道を舞台にしたサバイバル冒険ロマンバトルグルメ漫画。個人的には今現在、一番先が気になる漫画です(コミックス派ですけど)。

日露戦争直後の北海道。とある個人的な(ストイック過ぎて泣かせる…男の純情♪)目的のため、一獲千金を夢見て渡ってきた「不死身の杉元」こと杉元佐一。幾多の危機を鬼神の如き奮戦で潜り抜けて来た杉元だったが、今では地位も年金も何もなく、夢見た砂金もどこにもない。しかしある日のこと、アイヌが集めた大量の砂金が何処かに隠されているという酔っ払い老人の与太話に耳を傾けたところから、杉元の運命も一変する。

アイヌ達を殺して金塊を奪い隠した男は網走監獄に今も収監されている。金塊の在処はその男しか知らないが、厳重な警戒の中その男は、他の囚人達を利用した異様な暗号で金塊の隠し場所を外の仲間に伝えようとしたのだという。脱獄に成功し、散り散りになった囚人達。もしも、彼らを集めて暗号を解くことができれば、金塊が手に入る…!?

杉元は金塊探しの端緒についたばかりところでヒグマに襲われ、危ういところをアイヌの少女アシリパに救われる。金塊強奪の際に父を殺されたというアシリパは杉元と手を組み、二人で囚人達を探し始めるが、もちろん相手はみな凶悪犯、頭のネジが飛んじゃってる方々も少なくない模様。おまけに戦争で冷遇された陸軍の外れ者やら幕末の亡霊やらも金塊を狙って事態は三つ巴四つ巴。更にアシリパの危機に現れる白いエゾ狼レタラや杉元・アシリパ側についた元囚人・脱獄王白石など、敵味方入り乱れ食うか食われるかの戦い(&食うときの美味しいいただき方の実践。本当に美味そうなのだー)が、北海道の美しくも過酷な大自然の中で繰り広げられる…

てな感じなのですが、とにかく!!

アイヌの少女アシリパ(本当はリは小文字)が可愛すぎ、素敵すぎ(容姿はについては2巻表紙参照。ちなみに、この目の色は漫画的演出ではなく本当の色なのです。)。まだ思春期手前くらいの年頃ながら、狩人であった父について山野を巡り歩いていただけあって、狩りの腕と知識、度胸と冷静さは大人顔負け。単に頭が良いというのに留まらない聡明さがあり、その言葉は時に現代的開明的、時に森の賢者の響きを持つ(しかも母語ではないはずの日本語で言えちゃうのがちょっと出来杉さん)。もっとも、逞しいまでに食い意地は張ってるし、年相応の顔を見せたりもするのですが、そのギャップが何とも言えません。普段の美少女ぶりと変顔のギャップもまた可愛い。

そんな彼女を杉元は、何の嫌味も衒いもなく「アシリパさん」と呼ぶ。少なくとも10歳は年下の、しかも和人から差別されることも多かったアイヌの少女を。生き延びるため、目的を果たすためには人を殺すことにもまったく躊躇いのない杉元ですが、その一方で素直で人好きがして、心の底でケジメとか敬意とかを忘れないちょっとストイックというか折り目正しいというか…そう、一本筋の通ったヤツ、というのでしょうか(4巻から登場する殺人鬼・辺見が惚れ込むのもわか…いやいやあれは行き過ぎだないろんな意味で。もうちょっとマトモな殺人鬼だと思ってたのにさーぶつぶつ)。アシリパとはいいコンビです。これから先、どんな運命が二人を待ち受けているのかはわからないけど、叶うことなら、この関係は変わらないでいて欲しいと切に願います。

日露戦争後の北海道という、漫画ではこれまであまりお目にかからなかった時代背景や北海道の美しくも厳しい大自然、その中で生き抜くアイヌの習俗も興味深い。5巻の動向からすると、今後は北海道に留まらず、さらに大風呂敷というかスケールがデカくなっていくかもしれません。

 

最新刊の5巻では、アシリパの父が実はまだ生きて網走監獄にいること、そして金塊の秘密にも深く関係していることが明かされるのですが、アシリパの聡明さや意志の強さ等の非凡なところはおそらく父親の影響が強いと思うので(「新年」「明日」を意味する「アシリパ」は、父親の命名)、そういう意味でもどんな人なのか早く知りたい(姿形はもう、登場してるといえばしてるけど(汗))。

 

それにしても、ダンジョン飯といい、グルメ漫画も凄いというか、一筋縄ではいかなくなってきたもんじゃのう。

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