「それでも地球は回っている」(青木満著)/ペレ出版

今学期、放送大学で履修している「自然科学はじめの一歩」で参考図書として挙げられていたので読んでみました。

 

天文学史の本なのですが、四大文明の神話的宇宙観に始まり、古代、中世、ルネサンス、近代…各時代の学説の変遷と天文学者たちの苦闘を親しみやすい語り口で描いている。タイトルでもわかるとおり、ルネサンス時代の天動説から地動説への転換が核心的な部分ですし、この時代の一癖も二癖もある科学者たちの苦闘と人間模様が一番面白く感じられる。コペルニクスの「天空の回転について」の出版を巡るドタバタとか、ガリレオとウルバヌス8世の決裂、そして両方とも困った人であったらしいティコ・ブラーエとケプラーの葛藤、ティコの謎の死(ついつい「ケプラー疑惑~ティコ・ブラーエの死の謎と盗まれた観測記録」という本まで借りてしまったw)。異端として火刑に処せられたジョルダノ・ブルーノの「宇宙は無限で、太陽も無数、地球も無数にあって生き物が住んでる」とかも凄すぎる…コペルニクスのすぐ後の時代の人なのに、どうしてそんなことを思いついたんだろう。

 

そしてもうひとつ。天動説に基づいて超複雑かつ精緻なモデルを作り上げたプトレマイオス。紀元1~2C頃の人なのですが、彼のモデルを使えば天体の動きをほぼ完璧に捕捉できたというスグレモノだったが故に、聖書の記述を信奉するローマ・カトリック教会の権威と相まって、天動説が疑われぬまま1000年以上も信奉されてしまった…のだそうで。

どんな優れた人間でも当然間違いはあり得る、というのは理屈ではわかっているけど、優秀な人の間違いは本人に悪意がなくても、間違いと気付かせないこともある(まして端から騙すつもりだったら?)。そして、優れた人間が間違ってしまったときの影響たるや、そこらの凡人が間違ったときの比ではない、ということでしょうか。過去のことと嗤うことはできないよなあ、これ。

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