Project Hail Mary(Andy Weir)

映画『オデッセイ』の原作『火星の人』(といっても私は未見未読ですが)のアンディ・ウィアーによるハードSF。面白かった!科学音痴の私でも時間はかかりましたが楽しめました。太陽の発光量減退を解決するための切り札として宇宙船を送り出す…という設定から予想されるのとは違って、「生物の本質」とでも言うべきものが、まさかまさかのストーリーの曲折に大きく関わっているからかもしれません(生物学の部分はそれほど専門的ではないので…)。

そうはいっても専門用語も多く、ちまちま1カ月くらいかけてkindleで読みましたが、自然科学全般をもっと勉強したいな~という気になりました。

邦訳ももうすぐ出るんですね。12月16日発売だそうです。

上下巻ともに予約受付中。

 

 

物語は、「2たす2は何ですか?」という質問で始まります。これで目が覚めてみたら、管に繋がれたまま寝台に寝ていて言葉を発することも身体を動かすこともままならない。コンピュータがしつこく名前を聞いてくるが、自分の名前すら思い出せない。

戸惑いながらも状況を把握しようと手探りし始めた彼の脳裏に蘇る記憶の断片。太陽光が衰えつつあったこと、自分が生物学を志しながら挫折した中学教師リーランド・グレイスであること。太陽衰退の原因。そして、この宇宙船を解決の切り札として送り出すこととなった、Hail Maryプロジェクト。

 

 

物語は宇宙船Hail Maryでのミッションと、Hail Mary号を送り出すプロジェクトの進行(こちらは記憶の断片として徐々に蘇る)が交互に描かれます。

プロジェクト推進を阻む様々な困難、国際協定によりプロジェクトに係る全権を委託された指導者エヴァ・ストラットの鋼の意志と辣腕、様々な分野の科学者たちの努力、太陽系外への片道切符に志願したアストロノーツたち、政治的な軋轢、未来を覆う暗雲……現在進行形でもなく、ただの回想でもなく、「忘れていたことを思い出す」という形で提示されるので主人公グレイスの(受けたであろう)衝撃を共有するような新鮮さを生むと同時に、もうひとつ別の仕掛け(結構うわぁ…ってなる)にもなっている。

そしてHail Mary号でのミッション。ネタバレになるので書けることがほとんどないのが困りものですが、こちらも予想外の事態が次々と持ち上がり(孤独あり、新たな出会いあり)、宇宙飛行士としての訓練の記憶も十分でないグレースはその都度ばたばたしながら知恵を絞って対応し、時として重大な決断を迫られる。まあそんなに上手く行くかよ!という部分もありますが、この手探り感というかハンドメイド感が面白さの要因のひとつになっていると思う。

そして紆余曲折を経て辿り着いたラストは意外かつしんみりとニヤリが半々でなかなか良い。同時に、ストラットが別れ際に語ったグレース評はよくも悪くも的を射ていたな~と思わされる辺りは一筋縄ではいかない読後感。もしもこの物語に続きがあるなら、見てみたいような、怖いような。

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