まず第一に。
前編見たときの予告でチラっと出て来た、クシャナ殿下がクロトワ抱えて子守唄うたうシーンは…期待してましたがやはり凄く良かった………じーん…ここでの殿下はずっと心に抱えてきた怒りと憎しみをわすれて蟲に対峙し九死に一生を得る。それまでの殿下らしくないとも言える場面なのですが、その「いつもの自分」を離れた心情が、殿下役・中村七之助の演技と合っていたし、舞台に映えていた。
後編は原作で4巻~7巻のラストまで。もちろんストーリーを逐一追うことはできずダイジェストみたくなってますが、これは仕方ないところ。
土鬼の皇兄ナムリス、トルメキアのボンクラ三皇子、ヴ王に道化、巨神兵オーマ、箱庭の番人やシュワの墓所の主など、後半は歌舞伎で見て違和感ないセリフ回しや人物像の登場人物が増えてきたように思います。戯画的というか誇張的というか。
美術に関しては、前編では王蟲が美しかったけど、この後編では巨神兵が禍々しくて素晴らしかったし(登場人物としてのオーマを演じた尾上右近(アスベルとの2役)も良かったですが)、雪のように胞子が降り続くシーンなども綺麗でした。
気になっていたラスト。墓所に新たな人類(の卵)が保管されていることは説明されていたので、墓所の破壊=新人類(予定)の滅亡、ということは1+1で自明なのですが、ナウシカが意図して新たな人類の卵を滅ぼしたことはぼかされているし、ましてその罪を受け止め、なおかつ皆にはそれを秘匿したことにはまったく触れられていません。残念な気もしますが、この短時間のダイジェスト的筋書きの中で扱うには、重すぎる罪なのかもしれない。
ちなみに、殿下ファン目線でもうひとつ。原作ではナウシカがナムリスとの戦いでボロボロの下着姿になったまま、オーマと共に墓所に向かおうとするとき、殿下が自分のマントを放ってあげるのですが、本作ではボロボロにならないのでマントをあげる場面もない。しかしその代わり!ラストでヴ王の亡骸を自分のマントで覆うのです…(原作ではマント着てないので「王の亡骸を戦衣でつつめ」だった)これぞ怪我の功名というべきか。
ともあれ、意外な形で「風の谷のナウシカ」に再会できたことはとても嬉しかった。感謝していますし、難しい題材に取り組んだ意欲作として敬意を表したい。