『進撃の巨人』(諌山創/別冊少年マガジン)第124話『氷解』ネタバレ感想

制御不能の無垢巨人によってパニックに陥ったシガンシナでの各人の行動と戦いが今回の中心。ガビとカヤの間に相互理解が生まれる一方で、104期の間には亀裂が入り始める。

 

◆久々の無垢巨人の狂宴

ジークの制御下にあるはずの無垢巨人たちが見境なく人間を襲い始める。104期を始めとする兵団の生き残りがやむなく応戦し、無垢巨人を殲滅する。

ナイルとピクシスが無垢巨人のままお亡くなりになったのは地味にショックで悲しい…アルミンに介錯されたピクシスはまだしも、ナイルはカヤを襲って名もなき無垢としてガビにやられてるし(泣)それが無垢巨人の宿命ではあるんだけどさ。

そして、キース教官が!!教官は古いとかこの国を救うのはイェーガー派だとか訳知り顔でホザいてた眼鏡野郎が手掴みされているところに颯爽と登場!!カッケー!!やってくれるとは思ってましたが、期待以上のカッコよさでした。さすが、歴代団長の中でただ1人、生きたまま退任できただけある(後任のエルヴィンも死亡退団だったし)。ジャンの指揮や剣呑な目付きのミカサの剣技など久々に人間に見せ場が来た感じ ♪ それがすべてではないけれど、進撃はやっぱ巨人と人間(+立体機動&ブレード)の戦闘があってこそだよな…この場にリヴァイがいられたら不都合があるというのもメタ的にはわかる。わかります…

 

◆氷が溶け始める?

逃げ遅れたカヤを襲うナイル巨人に銃で立ち向かい、捨て身の攻撃でカヤを救ったガビ。近くにいたパラディ兵がガビをマーレの侵入者ではないかと疑うが、カヤやニコロが庇い、無事に切り抜ける。ベタだけど、やっぱ胸に来る…

他者の中だけでなく自分にも、誰の中にも等しく悪魔が潜む。それを自覚し乗り越えようとすることが、未来への微かな希望に繋がっている。ニコロの言葉はそういう趣旨だと思うけど、これはグリシャがクルーガーから言われた「(壁の外から行くお前が)壁の中で人を愛せ。それができなければ繰り返すだけだ。同じ歴史を、同じ過ちを、何度も」とも通底するものを持っている。

ほんの数人の間の憎しみが溶け始めたに過ぎない、巨大な氷山に入った小さなひびに過ぎないのかもしれない。でも、この細い道の先に、森の出口がたぶんある。そう考えれば無垢巨人になる直前にファルコを逃がし、巨人化してガビに殺されたナイルの死にも、確かな意味があったと言えるのかもしれない。

それにしても、ニコロってえらく柔軟な思考の良いヤツですね。マーレ人で志願兵になるくらいの熱意があったのにサシャたちに溶け込み、子供とはいえファルコやガビにも(一時の激情が去ったあとは)大人として気遣いを示せる…不吉すぎる。死なないで欲しい…

 

◆ファルコを連れ去るコニー

継承直後でのびてるファルコがまさかこんな使い方をされるとは。

コニーの辛さはわかるし、すべての秩序が崩壊しつつあるこの状況下でああいう行動に走るのも理解できる。さらに、4年前のエルヴィンアルミンの選択も私情によるものだった(100%言葉通りの私情とは私は思わないけど、リヴァイ自身が私情と総括しているので)ことで、コニーの行動を責められない素地はできてしまっていた。ただ…

夫もコニー以外の子供たちも、他の村人たちも全員巨人にされて討伐されて死んじゃってて、自分だけ他所の子供を喰って知性化巨人になりました、寿命は長くて13年。知性巨人の力を求める勢力から身を隠して生きなきゃならんし、おまけに壁は崩壊して世界大戦が始まる瀬戸際って状況で、人間に戻れて良かったハッピー…とはならないと思うんですよね…地獄に連れて来られたと、コニーを恨むようになることだってあり得る。でも、それでも巨人状態の母を見ていられないのが人間というもの。

まあ継承してまだ何もしてないファルコがこのまま死ぬはずはないので、何らかの邪魔が入るかコニーが思い直すかして、助かるとは思うけど。

 

◆ジャンとアルミン

エレンの宣言を受け、事態とエレンの意図を冷静に読み取り(超暗い顔で)理解を示す示すジャン。直後の無垢巨人暴走にもいち早く反応して陣頭指揮をとるし、顎を継承したファルコもぬかりなく確保、ピクシスに喰わせようという判断も的確で、ホント、成長したな(涙)マルコの人を見る目は確かだった。

一方アルミンは事の重大さに戦慄し、エレンの言葉を受け止めきれず愕然とするばかり。ライナーたちとの対立が更に深まることを恐れて、ファルコを誰かに食らわせることにも待ったをかけようとする。あげくコニーにお前だってベルトルト食っただろとキレられて、返す言葉がない。ちょっと頼りなく見えてしまう。

でもこれで思い出すのはマリア奪還作戦のときのこと。ベルトルトの意図を読み違えて自信喪失したアルミンが、的確に状況判断しているジャンに現場指揮を代わってくれと言い出す場面。これに対してジャンは、自分は状況は読めるが打開策は見つけられない、最終的にはアルミンを頼ると答えている。

今のジャンとアルミンの現状はこれのリフレインで、アルミンの視野と知恵によって根本的な打開策を見つける局面が、どこかで必ず来ると思うんですよね。今回のファルコの処遇についても、アルミンの申出は一見ちょっと甘すぎに映るけど、その裏でピクシスをあきらめ、切り捨てる覚悟を決めているということでもある。味方の命を敵の命で購うことを止めること。森の出口に続く道はたぶんそれなのだ。アルミンの今後に期待。ゲスミンらしさもちょっとは復活して欲しいな。

 

◆ごめんなさい、それでも…

ミカサとアルミンは、ブラウス氏の導きでガビと再会する。コニーの母が4年前に巨人に変えられてずっとそのままになっていたことを聞いたガビの口から洩れる「ごめんなさい」という言葉。ガビが他の人間がやったことに、大人から教え込まれた教条でなく自分の素直な気持ちとして、心底罪悪感を感じたのはこれが初めてだろう。何を自分の罪として向き合うか。島に来た当初のことを思うと凄い進歩(今までが頑な過ぎただけとも言えるが)。

一方でそれに続くアルミンに必死の形相で泣きつく姿を見ると、ああまだ本当に子どもなんだなあ…と実感して、何とも言えない気持ちになる。「頼んでみてよ!聞いてみてよ!」は大人に難題をふっかけ駄々をこねる子供そのもので(いや、言ってることは結構真っ当なんだけどさ)、こんな場面でなければちょっとクスッとしてしまっていただろう。

 

◆アニ復活

硬質化した水晶が氷解し、4年ぶりに出現したアニ。棘の指輪が過ぎ去った歳月とアニが経験できなかった諸々の事象を思い起こさせる。そして、彼女がすぐにも巨人化して拘束を逃れる可能性があるのだということも。

冒頭で登場した父と再会する日は来るのだろうか?父がアニに求めていたものは何だったのかアニの父絡みの回想や言動を見ていると、父が戦士としての名誉とか安楽な生活とかを求めていたようには思えない。何か特別な目的や信念があったのではないかと思うのだけど、明らかにされることがあるだろうか?

今の戦いの状況にどう絡んでくるのかも見もの。どこに拘束されていたのかわからないけど、一晩でトロスト区の訓練兵団とシーナ中央のミットラスを往復できる俊足&スタミナなので、今どこにいるとしても2~3日もあればミットラスだろうがシガンシナだろうがどこにでも出没できるだろうし。監視役のヒッチを攫って当面の人質にして、移動がてら4年間の状況変化についてレクを受けるって感じかな…それともアルミンがかけた言葉とかで睡眠学習しちゃってるのか?

 

 

うーん気になるところはまだまだあるけど、キリがないので今回はここまで。早く30巻買いに行かなきゃ!それにしても、兵長&ハンジさんどこにいるのよ~(泣)

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