コートールド美術館展ほか(東京都美術館)

この秋~冬に行きたいと思ってた展覧会の出撃第1弾は「コート―ルド美術館展~魅惑の印象派~」(東京都美術館)。あまり予備知識なく行ったのですが、マネやルノワールなどの印象派ど真ん中はもちろん、ゴーガンやロートレック、モリディアニなど、幅広い画家の作品が展示されていてとても面白かった!ちゃんと言葉で説明できるほどの素養もないのですが、特に印象に残った作品についての感想をちょっと。

※館内は撮影禁止なので写真は貼れませんが、「※ギャラリーに画像あり」の作品は展覧会HPのトップページの一番下の方のギャラリーに画像があります。

  

【フォリー=ベルジェ―ルのバー(エドゥアール・マネ)】※ギャラリーに画像あり

展覧会HPのトップやチケット券面にも採用されている、この美術展の顔ともいうべき作品。正面の女性と背後の月のような白い円形が目を惹きますが、舞台はパリのミュージックホール「フォリー=ベルジェール」内のバーカウンター。ふたつの白い丸は照明とそれが鏡面に映ったもの。正面の可愛いけどアンニュイな表情の若い女性はバーのメイドなのでした。

劇場やホールのバーなんて隅っこの脇役でしかないわけですが、演し物と喧騒に酔った浮遊感の中で、ふとそれに焦点があってしまう。ほの暗い照明の中にきらめくグラスやボトル。手慣れた様子の綺麗なお姉さん。そんな自分自身の体験を思い出してしまう。製作意図など私にはわかりませんが、月のような照明と鏡に映った虚像、書きなぐったような背後の客席、カウンターの上の静物の艶やかさ、女性の白い胸と対照的な手のごつさや荒れた感じなど、見飽きることのない作品です。

それにしても、背後の鏡面に映る姿からすると、彼女は今まさに接客中なわけですが…営業スマイルとも言いかねる微妙な表情の奥で、彼女は何を考えているのかいないのか。

 

【裸婦(アメディオ・モリディアニ)】※ギャラリーに画像あり

特別な美しさとか輝くような若さがあるわけではなく、かといって淫靡とか猥褻とかいうのでもない(と思う)。非常にエロティックな裸体だと思うのですが、なぜそう感じるのか自分でもよく説明がつかない不思議な絵。顔と身体のアンバランスさも忘れ難く、あとを引く作品。

 

【テ・レオリア(ポール・ゴーガン)】※ギャラリーに画像あり

「テ・レリオア」とはタヒチ語で「夢」という意味だそうです。2人のタヒチ人の女を中心に、脇の方に鋭い目つきをした白っぽい猫、更に隅っこの方に眠っている子供、遠景には馬に乗った男が小さく見えている。雑然としてバラバラなような、繋げようとすればすべて繋がるようなよくわからなさ、女たちのどうとでも取れるような静かな表情、単なる日常風景と言ってもおかしくない光景につけられた「夢」というタイトルがまた、わかるようなわからないような。すごく好き。

  

【傘をさす女性(エドガー・ドガ)】

未完成のまま放棄され、没後アトリエで見つかった作品ということですが、黒い影絵のような横顔がミステリアスで気になりました。

 

【税関(アンリ・ルソー)】

描かれている事物はとくにおかしいものはなく、普通なんだけど…何というか、現実世界を描いているとはとても思えない。ファンタジー小説(しかもどちらかといえばディストピアものの)の挿絵のよう。幻想的なタッチとはこういうのを言うのでしょうか。ちなみに、アンリ・ルソーは長年パリの税関に勤務していたのだとか(どことなくダークな雰囲気なのはそのためか!?)

 

【森、シャトゥー(ピエール・オーギュスト・ルノワール)】

タイトルのシャトゥーというのはセーヌ河沿いにあるパリ郊外の町なんだそうです。

手前の緑の野原から奥の木立へと深く分け入っていく麦わら帽子の後ろ姿がぽつんと小さく描かれている。首の傾げ方でわかる視線の先、木立の更に奥にはセーヌ河やそこに浮かぶ小舟らしきものがある。明るさと静けさを同時に感じさせ、郷愁をかき立てられる作品。

 

 

 

他にも印象派の風景画や彫刻なども多く展示されているし、配置も見やすい。おススメの展覧会です。平日朝だったせいもあるのか、混雑がそれほどでもないのも良かった。12月15日までということで、まだ期日があるので興味を持たれた方は是非どうぞ ♪

 

☆おまけ☆

下の階のギャラリーでは、『フィレンツェ賞展』日本バードカービング協会の『バードカービングコンクール』の展示会をやっていました(共に入場無料。)

『フィレンツェ賞展』は日本の若手作家の発掘を目的としたもので、大賞をとるとフィレンツェに留学できるらしい。好みに合う・合わないは多分にあるけど、素晴らしい絵、面白い絵を描く才能のある人は沢山いるんだな~と新鮮な気持ちになる。

『バードカービングコンクール』は鳥の木彫り彫刻(ほとんどは絵の具で彩色してある)のコンクール。鳥の種類はスズメなど身近なものから全然しらない海外の鳥まで、ポーズも普通に翼を畳んで立っているのから飛行中、餌採り中、営巣中など様々。マスターズクラスの優秀作品ともなると、翼や羽毛の質感の柔らかさ、一瞬を捉えた躍動感はとても木彫りとは思えない素晴らしさで、思わず触りたくなるのを抑えるのに苦労しました。よく知らない鳥もいろいろいて、そういう意味でも面白い展示会でした。ワライカワセミってカワセミよりずいぶん大きいのね…

 両方ともちょうど昨日(10/30)までだったのでその点でもラッキーな偶然。またこういう偶然があれば嬉しいし、あまり有名でない展示会を探して行ってみるのもいいかもしれないな。

 

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